プラスチック分野におけるLCAの基礎とCFP・Scope1,2,3の考え方 ―ライフサイクル全体で環境負荷を捉える考え方―

1.LCA(ライフサイクルアセスメント)とは何か

LCAの基本概念と目的

LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスについて、資源採取から原料の調達、製造、流通、使用、廃棄・リサイクルに至るまで、ライフサイクル全体を通じた環境負荷を定量的に評価する手法です。特定の工程に限定せず、製品全体を評価対象とする点が特徴です。

この考え方は、1970年代の資源制約やエネルギー危機、公害問題を背景に生まれ、その後、ISO14040/14044といった国際規格により体系化されてきました。近年では、気候変動対策の強化やサプライチェーン全体での排出量管理が求められるようになり、2020年前後から企業の規制対応や情報開示の実務において、その重要性が急速に高まっています。

製品の一部工程のみを対象とした評価では、環境負荷が別の工程に移転してしまう可能性があります。こうした課題を踏まえ、原料から使用後までを一つの評価単位として捉えるLCAの考え方が、環境影響を適切に把握する手法として重視されるようになりました。
プラスチック分野では、原料種、製造プロセス、使用後の処理方法によって環境影響が大きく異なります。LCAは、複数の技術選択肢を同一条件下で比較評価するための共通基盤となります。

LCAとカーボンフットプリント(CFP)の関係

LCAは、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量だけでなく、資源消費や廃棄物発生量など、複数の環境影響を評価対象とする包括的な手法です。GHG排出量、資源消費量、廃棄物発生量など、複数の環境影響を評価対象としています。
一方、カーボンフットプリント(CFP)は、LCAの枠組みの中から「温室効果ガス排出量」に特化して算定・表示する指標です。
つまり、
LCA:環境影響を総合的に評価する枠組み
CFP:LCAに基づき算定されるGHG排出量指標
という関係にあります。

近年の政策や企業開示では、まずGHG削減が重視されているため、LCA全体よりもCFPが前面に出る場面が増えていますが、その前提には必ずLCAの考え方があります。

LCA・CFP・Scope1,2,3の関係図

CFPとScope1,2,3の関係性

CFPは、製品ライフサイクルにおけるGHG排出量を算定する指標です。一方、Scope1、Scope2、Scope3は、GHGプロトコルに基づき、組織単位で排出源を分類するための区分です。

Scope1:自社の燃料使用などによる直接排出
Scope2:購入電力・熱に由来する間接排出
Scope3:原料調達、物流、製品使用、廃棄・リサイクルなどサプライチェーン全体の排出
CFPは、製品ライフサイクルにおけるGHG排出量を算定するため、結果としてScope1、2、3すべてに相当する排出を含みます。

LCA=評価の枠組み
CFP=GHGに特化した製品指標
Scope1,2,3=組織単位の排出分類
と、それぞれ目的が異なる整理体系である点が重要です。

2.プラスチックのLCAで評価される主な環境指標

プラスチックにおけるCFPとScope1,2,3

プラスチック製品のCFPを構成する排出源は多岐にわたります。重合や成形加工工程における燃料使用はScope1、工場で使用する電力はScope2に該当します。一方、ナフサやモノマーなどの原料製造、輸送、使用後の廃棄・リサイクル工程はScope3に分類されます。
多くの場合、プラスチック製品のCFPではScope3の比率が最も大きくなる※ことが特徴です。この点が、LCAに基づく評価が不可欠とされる理由の一つです。

プラスチック製品のライフサイクルとScope対応図

※ 企業のGHG排出量に関する多くの分析では、Scope 3が総排出量の多数を占めるとされています。例えば、S&P 100企業の報告 データではScope 3が総排出量の平均約67%を占めるとの分析があります(CPA Journal)。一部の業界解説では70〜90%になることが一般的とされています。なお、これは企業全体の排出構造に関する分析であり、個別製品CFPの比率と必ずしも一致するものではありません。

Scope3を含めて評価する意義

Scope1やScope2のみの削減努力は重要ですが、それだけでは製品としての環境価値を十分に示すことはできません。例えば、再生材の使用やケミカルリサイクルの導入は、原料調達や廃棄段階における排出削減、すなわちScope3の低減に寄与します。

LCAに基づくCFP算定により、

  • 化石由来原料とバイオ原料の差
  • メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの違い
  • 廃棄方法による環境影響の差

を定量的に示すことが可能となります。

GHG以外に評価される主な環境指標

LCAでは、GHG排出量以外にも、さまざまな環境指標が評価対象となります。
代表例:
資源消費量(化石資源・再生可能資源)

  • 水使用量
  • 酸性化ポテンシャル
  • 富栄養化ポテンシャル
  • 廃棄物発生量

今後は、環境政策や製品規制が高度化する中で、CFPを入口としつつ、LCAによる多面的評価が求められる場面が増えると考えられます。

3.LCAの基本プロセスと国際規格

LCAの基本プロセス

LCAは、ISO14040/14044において、以下の4つのプロセスで構成されると定義されています。それぞれは独立しているのではなく、相互に行き来しながら精度を高めていく点が特徴です。

① 目的および調査範囲の設定(Goal & Scope Definition)
最初に行うのが、「何のために、何を評価するのか」を明確にする工程です。ここでは、以下の点を定義します。

  • 評価の目的(例:製品間比較、環境価値の説明、規制対応 など)
  • 評価対象(製品、機能単位)
  • システム境界
  • 原料調達まで含めるのか
  • 使用段階を含めるのか
  • 廃棄・リサイクルをどう扱うのか

この段階での設定が、その後の結果を大きく左右します。特にCFP算定では、Scope1,2,3のどこまでを対象にするかを、この工程で明確にします。

② ライフサイクルインベントリ分析(LCI)
次に、設定した範囲に基づき、各工程で投入・排出される物量やエネルギー量を洗い出す作業を行います。

具体的には、

  • 原料使用量
  • 電力・燃料消費量
  • 排出されるCO₂量
  • 副産物・廃棄物量

などのデータを工程ごとに収集します。
Scope3に該当する原料製造や物流、廃棄工程については、外部データベースや業界平均値を用いることも一般的です。

③ ライフサイクル影響評価(LCIA)
インベントリ分析で得られた数値データを、環境影響として評価可能な指標に換算する工程です。CFPの場合は、各工程の温室効果ガス排出量をCO₂換算値として集計します。LCA全体では、GHG以外にも資源消費量や廃棄物発生量などの指標が用いられることがあります。

④ 結果の解釈(Interpretation)
最後に、算定結果を整理し、どの工程が環境負荷に大きく寄与しているのかを分析します。ここでは、前提条件やデータの不確実性を確認し、目的に照らして妥当な結論が導けているかを検証します。

この工程を通じて、

  • 削減余地の大きい工程の特定
  • 技術選択(再生材、リサイクル手法など)の比較
  • 規制・顧客要求への説明

につなげることが可能になります。

欧州・国内法規制におけるLCAとCFPの位置付け

①欧州における位置付け
欧州の環境政策では、「ライフサイクル思考」が一貫した基本原則として採用されています。そのため、LCAは評価の考え方として重視され、近年はその中でもCFPなどの定量的環境情報の活用が制度設計上重視される方向にあります。代表的な例として、以下が挙げられます。

持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)
製品の環境性能評価においてライフサイクル視点が求められており、カーボンフットプリントなどの環境情報をLCAに基づいて算定・開示することが想定されています。デジタルプロダクトパスポート(DPP)とも連動し、製品単位でのCFP情報の提供が議論されています。
包装・包装廃棄物規則(PPWR)
包装材のリサイクル性や環境性能評価において、ライフサイクル全体での環境影響を考慮する考え方が取り入れられています。再生材使用や削減効果の妥当性を示す際に、LCAに基づくCFP算定が根拠として活用されることが想定されています。

このように、欧州では
LCA(考え方) → CFP(算定指標) → 規制要件
という構造が徐々に明確になりつつあります。

②日本における位置付け
日本では、LCAやCFPを直接義務付ける包括的な製品規制はまだ限定的です。一方で、関連制度の中でLCAの考え方が参照されています。

地球温暖化対策推進法
企業による温室効果ガス排出量の算定・報告制度が整備されており、Scope1,2の排出把握が制度的に求められています。近年はScope3の算定・開示もガイドライン上で推奨されています。
カーボンフットプリントに関するガイドライン(経済産業省)
製品単位のGHG排出量算定について、LCAの考え方を基礎とすることが明示されています。
プラスチック資源循環促進法
LCAやCFPを直接義務付けるものではありませんが、製品設計段階からの環境配慮や資源循環の高度化が求められており、その効果を説明する手段としてLCAやCFPが活用される場面が増えています。

日本においては、自主的取り組みの位置付けが中心であるものの、国際動向を踏まえ、LCAに基づくCFP活用が実務上の標準になりつつある状況といえます。

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