1.ISCCとは?
ISCCは「International Sustainability & Carbon Certification」の略称で、「国際持続可能性カーボン認証」と訳されます。あらゆる持続可能な原材料を認証する国際的なプログラムで、バイオマス原料や廃棄物および加工残渣や再生可能な非バイオ原材料、林業/農業の作物残渣等の原材料に焦点を当てています。サプライチェーン全体でのトレーサビリティを保証し、グローバルに適用することができます。2024年12月現在、世界約130ヵ国で適用され、約12,500の有効なCertificationが発行されています。
2.ISCC PLUS認証とは?
ISCC EUとISCC PLUS
ISCCは市場毎に異なる認証制度を適用しています。
ISCC EUは、EU域内のバイオ燃料市場を対象とした認証スキームで、これはREDⅡに基づいて運用されています。対象となる資源の種類、資源の採取された農地、農地転用の時期などの持続可能性に加え、GHG(温室効果ガス)排出量の削減率についても厳格な要求があります。
一方、ISCC PLUSはより広範な適用範囲を持ち、EU域外の製品も対象としています。サーキュラーエコノミーとバイオエコノミーに貢献するあらゆる種類の農林業原料、バイオ廃棄物/残留物、化石燃料由来材料を対象とし、食品、飼料、エネルギー市場、および多様な産業用途(化学工業や包装など)など、REDⅡによって規制されていないすべての市場を範囲とします。
ISCC PLUS認証の3つの原材料カテゴリー
ISCC PLUSは、次の3つの原材料カテゴリーを認証の対象としています。
①バイオ原料
バイオマスに由来する原料です。バイオマスとは農業、林業、水産業や養殖業を含む関連産業(トウモロコシ、サトウキビ、菜種など)から採れた作物の生分解成分を指します。
②サーキュラー原料
埋め立てられたりサーマルリサイクル原料とされる代わりに、サプライチェーンの最初の原料として再利用されるものを指します。非バイオ原料由来で、メカニカルリサイクル或いはケミカルリサイクル処理された原料のことです。
- バイオサーキュラー
農業、林業、および漁業や水産養殖を含む関連産業からの生物由来の廃棄物と残留物、および産業廃棄物と都市廃棄物といった生分解成分を指します。(例:UCO、トール油、食品廃棄物など)
- サーキュラ
化石資源由来のリサイクル可能な品(例:混合プラスチック廃棄物、使用済み繊維や使用済みタイヤなど)を機械的/化学的処理した原料を意味します。
③再生可能
バイオマス以外の再生可能エネルギー源(電気など)を使用したプロセスで生産される非生物起源の再生可能燃料やe-燃料などを指します。
3.ISCC PLUS認証取得の必要性とメリット
ISCC PLUS認証を取得は、企業に多くのメリットをもたらします。
- 実績と信頼性の高い国際認証基準であり、原材料の持続可能性を証明出来る。
- 環境配慮型の製品や材料を求める企業との取引において、競争優位性に繋がる。
- ステークホルダーや取引先に対して、企業の環境経営をPR出来る。
4.ISCC PLUS認証の取得方法は?
ISCC PLUS認証を取得するには、まずは認証機関を選び、契約を締結します。次に、ISCCのウェブサイトにてシステムユーザー登録を行い、自社の登録番号を取得します。その後、認証機関に審査申請を行います。内部審査と認証機関による実地審査が行われ、合格すると、ISCC認証書が発行されます。尚、認証後は1年ごとに定期的な審査を受け、ISCCの要求基準を満たし続ける必要があります。
認証機関
従来、日本国内に拠点を有する認証機関は限られており、依頼が殺到することで認証取得までの期間も長引く傾向にありました。ただし、国内での認証取得件数が増え、ニーズも格段に増えている中で、国内外を問わず日本人審査員による日本語での審査が可能な認証機関も増えつつあり、複数の認証機関が審査員を養成し、体制を整えています。それぞれの企業のニーズに応じた選択が可能となってきています。
認証機関の一例 (日本人審査員による日本語での審査が可能と確認できた先※は末尾に★)
- Trans Certification & Inspection Sdn. Bhd.
- Control Union Certifications Germany GmbH ★
- SGSジャパン株式会社 ★
- SCS Global Services ★
- ビューローベリタスジャパン株式会社 ★
ISCC PLUS認証の取得手順(Trans Certification & Inspection Sdn. Bhd.の場合)
ISCC PLUS認証の取得費用と必要期間
ISCC PLUS認証を取得するためには、主にライセンス費用と監査費用の2種類の費用が発生します。ライセンス費用は、登録費用と認証費用から構成されます。登録費用は対象となる拠点の売上高に応じて設定されていることが一般的(2022年9月現在:200~2,000ユーロ)で、認証費用は基本料金と認証製品従量課金の合計(250ユーロ~)となります。また、監査費用は、監査実施時に認証機関に支払う費用で、1拠点あたり数十万円と、実地監査の際に発生した監査員の旅費(実費)が加算されます。
ISCC PLUS認証の取得にかかる費用は、企業規模や認証製品の量などによって異なるため、一概に総費用を示すことはできません。
5.PSジャパンの取得状況
PSジャパンは2022年4月に国内ポリスチレンメーカーとして初めて千葉工場(千葉県袖ケ浦市)で認証取得したのに次いで、2023年4月には水島工場(岡山県倉敷市)でも認証取得しました。「バイオ原料」並びに「サーキュラー原料」(バイオサーキュラーとサーキュラー)の原材料カテゴリーで取得し、国内の全製造拠点、全製品において、バイオマス、サーキュラーポリスチレンの生産、販売が可能となりました。実際に2023年10月からISCC PLUS認証に基づくマスバランス方式のバイオマスポリスチレンの出荷を開始し、以降、着実に拡大してきています。