資源循環社会実現に向けたプラスチックリサイクルの国内関係法令

1.資源循環社会実現に向けた3つの基本法

日本では、廃棄物の最終処分場のひっ迫や有害物質の環境への影響が問題になっています。また、地球温暖化や資源の枯渇など、地球規模の問題も懸念されています。こうした環境問題や資源制約への対応を行い、環境と経済が両立した新しい循環型社会システムを構築するため、3Rの推進を目的とする枠組みがつくられてきました。
基本的な枠組みを設定した「循環型社会形成推進基本法」、資源の有効な利用の促進に関する「資源有効利用促進法」と廃棄物の適正処理について定めた「廃棄物処理法」です。

基本的な枠組みを設定した「循環型社会形成基本法」(2001年施行)

循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みとなる法律として制定されたのが「循環型社会形成基本法」で、2001年に施行されました。廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進するための基盤を確立するとともに、個別の廃棄物・リサイクル関係法律の整備と併せて、循環型社会の形成に向け実効力のある取組みの推進を図るものと位置付けられています。

概要

  • 形成すべき「循環型社会」の姿を提示。「循環型社会」について、廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用及び適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会と定義。
  • 法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義するとともに、処理の優先順位を法定化。1発生抑制→2再使用→3再生利用→4熱回収→5適正処分を明示。
  • 国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化し、事業者・国民の排出者責任と生産者が「拡大生産者責任※」を負う一般原則を確立。
  • 政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定することを規定するとともに、資源循環社会形成に向けた国の施策を明示。

※   製品の生産者が、製品の廃棄やリサイクルなど、製品のライフサイクル全体にわたる環境負荷に対して責任を負うとする考え方。

3Rの推進に向けた「資源有効利用促進法」(2001年施行)

循環型社会を形成していくために必要な3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みを総合的に推進するための法律で、2001年に施行されました。特に事業者に対して3Rの取り組みが必要となる業種や製品を政令で指定し、自主的に取り組むべき具体的な内容を省令で定めることとしています。
具体的には、特定省資源業種(副産物の発生抑制等に取組むことが求められる業種)5業種、特定再利用業種(再生資源・再生部品の利用に取組むことが求められる業種)5業種として計10業種・69品目を指定して、製品の製造段階における3R対策、設計段階における3Rの配慮、分別回収のための識別表示、事業者による自主回収・リサイクルシステムの構築などが規定されています。

(参考)https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/02/

廃棄物の適正処理について定めた「廃棄物処理法」

廃棄物の排出抑制と分別、保管、収集、運搬、再生、処分等処理の適正化を通じて、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として制定されました。廃棄物の定義や、国民、事業者、国、地方公共団体の責務、一般廃棄物の処理や産業廃棄物の処理等について規定されています。

2.製品特性に応じた個別のリサイクル法規制

上記3法令に加えて、廃棄物発生量に占める割合が高い製品(容器包装や家電製品等)を対象とした個別リサイクル法が順次制定・施行されてきました。
プラスチックのリサイクルに特に関わるものとしては、容器包装リサイクル法と家電リサイクル法の2つが挙げられます。

「容器包装リサイクル法」(2000年完全施行)

一般家庭から出るごみの6割(容積比)を占める容器包装廃棄物を資源として有効利用することにより、ごみの減量化を図るための法律です。リサイクル義務が生じる容器包装として、ガラス製容器と紙製容器包装に加えて、PETボトルとプラスチック製容器包装(発泡スチロールトレイを含む)を指定しています。
すべての人々がそれぞれの立場でリサイクルの役割を担うということがこの法律の基本理念であり、消費者は「排出抑制」「分別排出」し、市町村は「分別収集」し、事業者は「再商品化(リサイクル)」を行う(拡大生産者責任の導入)という各々の役割分担が明確化されました。

事業者が再商品化(リサイクル)義務を果たすには、①自主回収(第18条)、②指定法人(公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会)への委託(第14条)、③認定を受けて行う再商品化(独自ルート)(第15条)の3つの方法があり、いずれかを選ぶこととなります。
尚、再商品化の義務を負う特定事業者が、この義務を履行しない場合は、国による「指導、助言」、「勧告」、「公表」、「命令」を経て「罰則」が適用されます。

(参考)seido-r05.pdf

「家電リサイクル法」(2001年施行)

一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン、テレビ(ブラウン管、液晶式、有機EL式、プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。

消費者や事業者等の排出者に対しては「適正排出」と「費用負担(収集運搬料金とリサイクル料金)」を求めるとともに、小売業者に対しては「排出場所での引取り及び製造業者等への引渡しの義務」(収集運搬)を課し、製造業者等に対して「指定引取場所における引取り及び再商品化等の義務」(再商品化等)を課しています。

現在、指定引取場所については全製造業者等が共同で、家電リサイクルプラントについては全製造業者等が2つのグループに分かれて、委託を行っています。全国におけるいずれの指定引取場所においてもメーカー名に関わらず廃家電4品目の引取りが可能です。また、家電リサイクルプラントは、現在、Aグループと呼ばれるグループの家電リサイクルプラントが全国27施設、Bグループと呼ばれるグループの家電リサイクルプラントが全国15施設、両グループ共同の家電リサイクルプラントが全国3施設あります。

(参考)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/shiryousyu/guidebook2024.pdf

3.プラスチックリサイクルに関する包括的な法制度

プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内における特にプラスチック資源循環を促進する重要性が高まっています。
当該背景下、政府は、2019年に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、3R+Renewableの基本原則と、6つの野心的なマイルストーンを目指すべき方向性として掲げました。
さらに、2021年には、プラスチック使用製品の設計からプラスチック使用製品廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる主体におけるプラスチックの資源循環の取組を促進するための措置を盛り込んだ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が制定されました。

「プラスチック資源循環戦略」(2019年策定)

3R+Renewableの基本原則を明示するとともに、実効的な①資源循環、②海洋プラ対策、③国際展開、④基盤整備に向けた重点戦略を設定し、6つの野心的なマイルストーンを目指すべき方向性として掲げました。

<リデュース>
①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出

<リユース・リサイクル>
②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
③2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用

<再生利用・バイオマスプラスチック>
⑤2030年までに再生利用を倍増
⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万t導入

(参考)https://plastic-circulation.env.go.jp/about/senryaku

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(2022年施行)

プラスチックに係る資源循環の促進等を図るため、プラスチック使用製品の使用の合理化、プラスチック使用製品の廃棄物の市町村による再商品化並びに事業者による自主回収及び再資源化を促進するための制度の創設等の措置を講ずることを定めました。(第一条)
事業者及び消費者、国、地方公共団体の責務を定め、プラスチック使用製品の設計からプラスチック使用製品廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わる全ての主体が取組みを促進し、プラスチックの資源循環の取組を促進するための措置を盛り込んでいます。

4.最新のプラスチックリサイクルに関する立法の動きと
PSジャパンの対応

「プラスチック汚染を防止するための国際条約」に関する政府間交渉が行われ、国際的にも資源有効利用に向けた取組みがますます重要になる中、日本でも2025年の通常国会において資源有効利用促進法の改正案について審議される見込みです。

「資源有効利用促進法」改正

2023年度成立の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の改正と併せて、資源有効利用促進法についても改正され、プラスチックなどの資源の再生材利用に関する義務が拡充される予定です。
現在公表されているポイントは以下の通りです。

  • 再生資源の利用義務化
    プラスチック等を中心に、製造事業者等に対して、再生材の使用割合を数値目標化し、事業者が定期的に報告を行うことを義務付ける内容。
  • 環境配慮設計の促進
    GXに必要な原材料等の再資源化の促進
  • サーキュラーエコノミーコマースの促進

(参考)https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250225001/20250225001.html

 

PSジャパンの対応

改正法が施行されると、再生資源の利用義務化や環境配慮設計の促進等により、特に包装・容器メーカーや電気電子機器メーカーを含めた様々な分野において、調達先の見直しや生産プロセスの最適化等の対応が必要になる可能性があります。

PSジャパンでは、両親会社とも連携しながらケミカルリサイクルポリスチレンを生産/提供するスキームを計画しています。
資源循環社会の実現に向け、プラスチックに関わる立法の動きも進むと予想される中、ポリスチレン製造メーカーとして、引き続きポリスチレンリサイクルの社会実装化と安定供給の早期確立に向け、お取引先や関係各所と連携して取り組んでまいります。

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