欧州PPWRの解説と日本への影響予測

1.PPWRとは?

EUがPPWRを策定した背景は?

欧州におけるPackaging and Packaging Waste Regulation(PPWR)は、EUが進める脱炭素と循環経済の実現に向けた政策体系の中で、重要な位置付けを担っています。背景には、欧州グリーンディールが掲げる「2050年カーボンニュートラル」目標と、それを具体化する循環経済行動計画(CEAP)があります。

(参考) 欧州環境法規制の全体像と日本企業への影響 | PSジャパン株式会社

CEAPでは、製品ライフサイクル全体における資源効率の向上と環境負荷の低減が重視されており、なかでも包装材は消費量が多く、廃棄量も増え続けていることから、優先的な対策分野とされてきました。
しかし、従来の指令(Packaging and Packaging Waste Directive:PPWD)では、加盟国ごとにリサイクル制度や回収インフラ整備の進捗にばらつきがあり、EU全体として循環経済を推進する上での制約となっていました。
こうした課題を解消するため、EUは従来の「指令(Directive)」から、加盟国に直接効力を持つ「規則(Regulation)」へと法形式を格上げし、EU共通ルールとして強制力をもって適用することを選択しました。これがPPWRです。
PPWRは2025年2月11日に発効し、2026年8月12日から一般適用が順次開始されます。これにより、再使用義務、再生材含有率、包装の最小化、リサイクルを前提とした設計要件(Design for Recycling)など、多岐にわたる新たなルールがEU域内企業に一律で適用されることになります。

(参考)EU 大使館日本代表部資料 100788022.pdf

PPWRの発効/適用スケジュール

PPWRの主要要件

PPWRが目指すのは、EU域内の包装材について「減らし、再使用し、リサイクルしやすく設計する」という循環を、制度として確実に回すことです。そのため、これまで推奨やガイドラインにとどまっていた内容の多くが規則によって義務化され、企業の包装設計、素材選定、流通方法に直接的な影響を与えます。
主な要件は以下のとおりです。

①再使用義務
流通、外食、飲料など特定用途の包装において、再使用可能な設計および回収スキームの構築が義務付けられます。使い捨て包装を前提とした従来型ビジネスモデルからの転換を促す中核的な要素です。

②再生材の利用義務
2030年以降、包装用途ごとに再生プラスチックの使用比率が段階的に設定され、一定割合以上の使用が求められます。再生材の品質確保や、安定的なサプライチェーン構築が不可欠となります。

③ リサイクルを前提とした設計要件
単一素材化、容易分解性、装飾材の抑制など、リサイクルしやすい構造を義務的に満たすことが求められます。ブランド訴求を優先して複雑化してきた包装設計の見直しは避けられません。

④ 過剰包装の削減と特定用途包装の制限
必要以上に大きい包装や複数層による過剰包装は禁止され、特定用途の使い捨て包装は段階的に市場から排除されます。これにより、廃棄物の発生抑制を制度的に後押しします。

⑤ 情報開示・トレーサビリティ義務
リサイクル適性や使用素材に関する情報をデジタルラベルなどで可視化し、透明性を確保する必要があります。包装材の管理水準を高める仕組みです。

これらの要件は、次節で触れるように、EU域内企業だけでなく、域外からEU市場へ製品を供給する企業にも広く影響を及ぼすことになります。

EU域内企業が直面する変革

PPWRは単なる包装材規制にとどまらず、企業のサプライチェーン全体に構造的な変革を求める制度です。再使用義務、再生材含有率、リサイクル設計基準が広範に適用されるため、設計、調達、物流など部門横断的な対応が不可欠となります。

まず包装設計においては、複合素材や付加価値重視の仕様から、単一素材化や容易分別性といったリサイクル適性を優先する方向への転換が求められます。これにより、製品開発部門やマーケティング部門との協働が増え、包装は「販売促進ツール」から「循環型製品の構成要素」へと位置付けが変化します。
さらに調達面では、再生材需要の急増に伴う調達競争が懸念され、リサイクラーとの連携強化や原料ポートフォリオの再構築が避けられません。
加えて物流・流通領域でも、再使用容器の回収・再投入スキーム構築など、新たなオペレーションへの対応が求められます。このようにPPWRは、企業活動全体を循環型へと再設計することを促す、大きな構造変革をもたらす制度だといえます。

2.PPWRが日本の産業へもたらす影響予測

日本企業の輸出ビジネスへのインパクト

PPWRの適用開始により、日本企業がEU市場へ製品を輸出する際のハードルは、これまで以上に高まります。製品に付随する包装材や、成形品としてEU域内で流通するプラスチック部材についても、PPWRが定める設計基準、再生材含有率、再使用要件への適合が求められます。
従来のように加盟国ごとの運用差を踏まえて個別対応することは難しくなり、EU共通の統一基準への直接準拠が必須となります。包装の単一素材化や容易分別性、過剰包装の排除に加え、2030年以降の再生材使用義務への対応も不可欠です。
とりわけ、OEM・ODMとして欧州ブランド向けに製品を製造する日本企業では、取引先からの要求が一層厳格化すると見込まれ、材料選定、設計仕様、品質管理体制の見直しは避けられません。
加えて、環境情報の透明性やトレーサビリティの確保も強く求められることから、LCAデータやリサイクル適性評価の提示など、従来以上の情報開示対応が必要となります。PPWR対応は、日本企業にとってEUビジネスを維持・拡大するための必須条件となりつつあります。

国内政策への波及

2025年5月、GX推進法および資源有効利用促進法の改正が成立し、再生資源の利用義務化や環境配慮設計に関する制度導入が明記されました。これらの法改正は、日本独自の環境課題への対応にとどまらず、国際的に厳格化する資源循環型社会の法規制に歩調を合わせる狙いが大きいといえます。
特にEUでは、PPWRによる包装材の再使用義務化や再生材含有率の設定に加え、ELV規則改定による自動車部材のリサイクル要件強化など、製品設計から回収・再利用までを一体で管理する制度整備が急速に進んでいます。日本企業がグローバル市場で競争力を維持するためには、国内制度についても同等レベルの資源循環要件を整備する必要があり、こうした国際動向が法改正を後押しした形といえます。
改正後の制度では、再生資源の利用計画策定や環境配慮設計の推進が義務化される方向となり、包装やプラスチック製品に対する評価基準はEUと近い構造へと変化しつつあります。その結果、素材選択、設計思想、回収スキームに至るまで、企業の取り組みは循環型を前提としたものへ再編されることが求められます。

プラスチック製品メーカーへの影響

PPWRの本格施行を前に、EU向けに製品を供給する日本のプラスチック製品メーカーには、これまで以上に踏み込んだ素材選定と設計改革が求められています。包装材に限らず、家電、日用品、自動車部材など広範な成形品において、再生材利用やリサイクル性向上への対応が重要な論点となります。
単一素材化、接着剤や装飾材の削減、容易分解構造の導入など、製品ライフサイクル全体を見据えた設計変更は避けて通れない課題です。

さらにEUでは、製品パスポート制度の導入が進められており、使用樹脂の種類、再生材比率、リサイクル適性といった情報開示が企業の責務となりつつあります。これにより、成形メーカーは素材情報を正確に把握し、顧客やサプライチェーンに提示できる体制整備が求められます。
こうした要求は将来的に日本国内市場にも波及すると考えられ、環境対応は企業にとって、規制対応にとどまらない競争力強化の重要テーマになっていくと見込まれます。

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